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らくえん〜あいかわらずなぼく。の場合〜

 嫌いじゃない。かなり嫌いじゃないしすたぁエンジェルにロケットの夏。その、テラルナーの最新作である。
 しすエンはハイテンションな笑いが、ロケ夏はテンポの良い掛け合いが、実に良かった。ロケ夏に至っては泣きの部分も良かったなぁ。
 そして登場。らくえん。
 短い名称なので、特に略称などは無い。

 えっと……公式サイトの公式情報。あれ全部ワールド(ぉぉ

> 人類は異星人に支配されていた。

 などと大きな風呂敷を広げていらっしゃいますが、ぶっちゃけ公式サイトのような設定のゲームを製作すると言うお話が、このらくえんです。つまりエロゲ製作アドベンチャー。副題である「あいかわらずなぼく。」と言うゲームを製作するストーリーなのだ。
 リアルな堕落した戦場であるコミケを題材にしたゲームはいくつかあったが、ついにエロゲ製作をゲーム内容にしたゲームが登場した。ユーザー側からすれば恐ろしいほど笑えないジョークが連発される。しかし、そこで笑って許してあげられるのが、真のゲーマーなのか。いや、このゲームが楽しめるとしたら、まさに真のエロゲ情報通、または、関係者と言えるだろう。
 かなりギリギリの状態で存続する1ブランド開発室が舞台となるが、あまりにリアルで笑えない。いやここは笑う所なのか。
 逃げるシナリオライター。早い安いのライターだと面白くない。ライターなんて生き物は、神が降臨すれば即書き上げるってか。
 原画家も逃げる。上がらない原画。進まない進まない進まない。シナリオ無いのにどうやって作業に入るんだ。苦悩苦悩苦悩。
 何も決まってないのにどんどん公開される情報(広報)。発売日って何ですか。どう考えても未知の情報が暴走しています、本当にありがとうございました。
 ブランドのお上はヤな職業の人々。実績が無ければ予算は出ない。気分次第で責めないで。
 プログラムは動かない、止まる、システムを巻き込む、また最初からやり直し。遅々として進まないデバッグ作業。
 発売決定!とか新作情報!なんて信じるなって製作者サイドの辛辣な願いが、どのようにして発売日が延期されるのかって製作者サイドの魂の叫びが、ヒシヒシと聞こえてまいります
 一般人には単語からして理解できないけど、俺らヲタなら当たり前の常識。妹=義理というエロゲーにおける鉄則も、2ちゃん用語も、コミケも普通に出てきます。違和感無く。そんなの大前提の基礎知識。

> 堕落する準備はOK?

 じゃ、各シナリオとキャラクターを紹介するとしますか。
 まず最初にクリアしたのは、杏。
 主人公のナマイキではないほうの妹。亜季とは双子の姉にあたる。
 上京した主人公が心配で見にきたらエロゲー製作なんかに巻き込まれていやがりますよ主人公。その状況に、なし崩し的に加わって「制作進行」を受け持つことに。
 作中では唯一の一般人的存在であるが、彼女にするならこの子が正解のはずなのに妹であるという壁が立ちふさがる。シナリオも妹としての存在が強く描かれており、クリエイターが真に困窮した際、支えてくれる。このシナリオは杏というキャラクターよりも、むしろ主人公のクリエイターとしての困窮とした心情が巧く描かれており、正直言って杏じゃなくてもいいわけだ。しかしこのシナリオに杏を置くことによって「妹障壁」という2重のシナリオが完成するわけだ。

 次に紗絵。
 主人公が中学生の頃に3日間だけお付き合いのようなものをしたことがある後輩。大学受験に失敗し浪人生として予備校に通うところで偶然に再会する。運命的なようにも見えるが、主人公と離れた後に腐女子として覚醒し、今に至るらしい。「あいかわらずなぼく。」の製作に対して、紗絵はシナリオを担当することになる。黒髪ロングのメガネっ娘。
 主人公の今の状況である、浪人生としての話が大きくなるシナリオになり、堕落した世界からは一番遠い部分。しかし、そこはそれ、腐女子であるがゆえに。

 続けて亜季。
 ナマイキなほうの妹であり、杏とは双子の妹にあたる。
 主人公に連れられて遊びに来たコミフェでスカウトされ、声優の道を目指すことになる。
 新人声優&身内ということで、「あいかわらずなぼく。」の製作に関しても声優として参加することになる。
 が、声優とは言ってしまえば最後の味付け。シナリオが完全に出来上がってこそゲーム製作に参加できる立場であって、ゲームの製作に関してはそれほど絡んでこない。絡んで来ないからと言ってシナリオが薄いわけでもない。杏シナリオでは「妹として壁を乗り越える」だったが、亜季シナリオでは「妹ではなく壁を乗り越える」ものであり、亜季が一人前の人間として成長し、主人公に対して男女の恋愛を求めていくシナリオなのである。

 ラス前にみか。
 主人公が所属するムーナスブランドにとっての仮想対抗であるライバルブランドの看板原画家。コミフェで出会い、アキバのエロゲショップで偶然再開。天然ほぇほぇ系のお姉さんだ。
 亜季と同じく、「あいかわらずなぼく。」のゲーム製作に関してはまったくの部外者。つーか、ライバルブランドの原画家同士が付き合っちゃうなんてどう考えても周囲の軋轢がありそうなものだけど、この2人にはまったく関係なし。むしろ、堕落したこの世界でハッピーエンドで綺麗に締め括られてしまう。なんという不思議。別に、製作者のファンタジーとか妄想とかが入っているわけでもなく、ヒロインのみかがタバコを普通に吸うなんてリアリズムが入っているほどだ。

 最後に残した一番美味しい所、可憐。
 主人公が働くことになったムーナスを支える最重要人物。ムーナスの屋台骨。脅威のスピードとプロの仕事を見せるグラフィッカーである。見た目はめっさ小さく、やたら噛みつく凶暴なキャラクター。そして、主人公の原画に惚れて最良のパートナーとして選び、「あいかわらずなぼく。」の製作に巻き込んだ諸悪の根源だ。
 グラフィッカーという担当は、ある一定のレベルに達していればユーザーサイドからはあまり目立たない存在である。ユーザーサイドからすればやはりシナリオライターと原画家が最も評価される部分であり、システム・プログラムのように一定の基準さえ満たせば、グラフィッカーなど誰でもいいのであるが、それ故の苦悩がこのシナリオの最大の主題。「あいかわらずなぼく。」のシステムプログラマーは金で雇った外注のマーキーであり、マーキー自身も「私は外注ですので」というスタンスで「あいかわらずなぼく。」に接してくる。しかし、可憐はムーナスブランド事務所の屋台骨であり、「あいかわらずなぼく。」製作の最大戦力である。それが故の苦悩。
 原画やライターの進行が止まればゲームの制作進行はストップするが、グラフィッカーが居なくなったところで外注してしまっても問題は発生せずに「あいかわらずなぼく。」は完成してしまう。主人公よりも真剣に、むしろこのムーナス事務所において唯一本気で「あいかわらずなぼく。」を創り上げたい可憐。このシナリオはさすがに感動を覚えたのだが、可憐の別の設定のおかげで泣くことまでは出来なかったのが残念。実はお嬢様とかどうでもええやん(ぉぉ

 さて、総評。
 シナリオは絶賛。自らを貶める苦笑を最大限に発揮しながら、最大限の業界批判と自己批判までを行っているその真摯な姿勢は褒め称えるべきである。業界批判と言うのは「見切り発車の広報体制」と「ゲーム製作への熱意」である。自己批判と言うのは「名作は出来ない」と「選民思想」である。
 CGはクセが強いが、しすエンで慣れたので問題ない。ただ、このゲームに萌えとか抜けるとか求めるのは甚だ間違っている。
 音楽はやけに古いイメージがあるが、それが「現在進行形じゃないよ。ドキュメンタリーじゃないよ。」という製作者のトラップになっている。実際、「ドキュメンタリーです」と言われても違和感の無いリアリティに加えて、テラルナーブランドがこの作品を最後に消滅している事実。
 システムは問題なく動作する。普通のシステムだろう。
 総じて、ディープなゲーマーにしか笑えないギャグ、共感できないシナリオなので、自分がディープな人間だと思わなければ絶対に手を出すべきではない。最低でも30本をレビューしたユーザー、または、100本をクリアしたユーザーレベルでないと楽しむことすら出来ないと思われる。しかしこの作品を楽しめるコアなユーザーは、この作品を絶賛してやまないだろう。

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Document Write by iszark. Last Update, 2006-06-04.
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